当院における心不全診療
北海道の人口は1997年以降減少し続けており、高齢化が著しく進行しています。江別市も同様で、全国平均より高齢化が進んでいます。そのような中で、札幌のベッドタウンとして近年注目を集め、江別市の人口は北海道7位で、2020年の人口統計では人口も増加しています。高齢化への対策とともに、医療体制の更なる充実が必要とされています。
心不全とは、「心臓のポンプ機能の低下によって全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せず、息切れやむくみが起こり、生命を縮めてしまう病気」です。社会の高齢化に伴って心不全患者は増加しており、高齢になると他の病気を合併することも多いため、高い診療能力が求められます。
このような背景で、心不全診療を地域で完結させ、患者さんが安心して生活を送ることができるように、当科では循環器疾患の中でも特に心不全診療に力を入れています。2022年4月より、心不全および心臓リハビテーションを専門とする松本医師が赴任しました。心不全の薬物治療はここ数年で劇的に進歩しており、これまでの豊富な臨床経験をもとに日々診療にあたるとともに、学会や講演会などで医療関係者への情報提供も積極的に行っています。「心不全診療を地域で完結させる」という理念のもと、院内の多職種連携や、病病連携・病診連携、訪問看護ステーション、院外薬剤師との連携などにも取り組んでいます。また、当院には心不全療養指導士の資格を有する職員が2023年3月時点で6人(外来看護師、病棟看護師、管理栄養士、作業療法士、薬剤師)在籍しており、リーダーシップを発揮して患者さんのために精力的に活動しています。
当院では、他院に先駆けて心不全の在宅モニタリングシステムを2022年より導入しました(下図参照)。医療は日々進歩していますが、心不全は未だに進行性で予後不良の疾患であり、約30%の心不全患者さんが退院後半年以内に再入院を要すると報告されています。心不全入院を繰り返す患者さんなどを対象として本モニタリングシステムを貸与し、自宅で測定したバイタルデータ (血圧、酸素飽和度、体重、体温)を医療従事者が毎日確認することで、心不全悪化の早期発見や早期治療に努めています。心不全在宅モニタリングシステムの有用性を解析して発信し、日本の心不全診療の更なる発展に貢献できるよう、臨床と研究の両面から取り組んでいます。